50歳になったある朝、いつものように大学のレッスン室でピアノを練習ていて突然思いました、「自分は3歳からピアノを弾いていて、50歳になってもこの程度の音楽しかできないと言うことは、このままでは70歳になっても100歳になっても変わらない!」
そこで、生まれて始めて練習と言うもの色々リサーチするようになりました。そして、紆余曲折あり、脳と言うものが非常に影響していて、しかも、Chopinの時代でさえそのことに気づいていたことにも辿り着きました。
そして、紆余曲折あり、脳と言うものが非常に影響していて、しかも、Chopinの時代でさえそのことに気づいていたことにも辿り着きました。

多くは、St. Petersburgの大学の教授が書いた、Art of Piano Playingと言う本で学んだのですが、そこには非常に細く、この練習をすると脳のどこが反応して、、という説明がありました。
この本のおかげで練習内容が大きく変わったのですが、同時に日本語の同じような内容の本はないだろうかと探したところ、古屋晋一さんという脳科学者の方が書かれた、「ピアニストの脳を科学する」と言う本を発見しました。
とても素晴らしい内容で、長年日本人の学生にも是非読むように勧めてきたのですが、その本の最後に一つだけ気になることが書かれてあります。「ジャズのアドリブは脳に蓄積されたものがでてきて音楽を作るものなので、厳密にはアドリブ(即興)ではない」と言う部分です。
ここはジャズミュージシャンとしては、同意する部分もあるものの、少し物申したい記述です。 同意できる部分は、アドリブは確かに創造のプロセスとしては、脳に蓄積された何かが出てきているわけで、理論上の「真に新しいもの」が出てきているわけではありません。この意味では、おそらく数年もかからないうちにAIが非常に高度なアドリブをするようになると思います。アドリブ中の他のミュージシャンとのいわゆるinteractionというその場の反応すらできるようになると思います。 もしかしてAIが今ある音楽の仕事の半分以上をこなしていくことになるのかもしれません。CMの音楽などは時間の勝負ですから多分AIには敵わないでしょうね。

では100%同意できない部分は何かというと、、
アドリブがうまくいく時は実は、演奏家も自分が知らないものが出てくるという部分です。
非常に変で不思議な話しですが、
即興をしている時に自分ではない何かが自分の知らないものを演奏するような感覚に陥ることがあります。その瞬間は、本当に自分の知らないことが出てきますし、その瞬間の音楽は、自分が、こういう音楽を作ろうとかこういう雰囲気にしようとかいう次元を超えて、勝手に音楽ができていき、しかも、全く自分が思ってもいなかったというか、全く自分が作り出しているのではない、音楽が生まれて、しかもその完成度は非常に高いです。この部分については多くのジャズミュージシャンが語っていて、表現こそ違いますが、ジャズを作ったレジェンドも含め、ほぼ全てのミュージシャンがが同じ経験をしているようです。
私もその一人です。
即興ってこんな変なことが起こる音楽です。。ただ、残念ながらそれはいつもいつも簡単にできることではありません。
そこで、ミュージシャンによっては、薬やお酒で自分の知らない世界に行こうとしたり、または宗教に入って行ったり、音楽と宇宙のつながりを感じて行ったりという精神世界を経験しようとするのかもしれません。
私個人的には、お酒を飲んでの演奏はしませんし、薬をやらないのはもちろんのこと、これといった宗教もありません。
ただ、即興には、通常分析されている脳の働きとは違う何かが起こっているのは確かだと思います。
だとしたら、ここはAIに勝てるかもしれません。AIは基本データ蓄積ですが、脳が知らないことのデータ解析も蓄積もできない気がするんですよね。だって知らないんですから。 これって少しだけ人間に希望が持てる部分かもしれません。